耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
「っ!!」
美寧の視界は真っ白。頬にはサラリとしたリネンの感触。
息を呑んだ瞬間、ほんのりと香る温かみあるムスクが胸いっぱいに入ってきた。
なんだか切なくなって、心臓がきゅっと立てて鳴いた。
「―――ma minette」
低く、甘く、囁かれる。
言葉と共に耳に掛かる吐息。ダイレクトに耳の中に注ぎ込まれたような感覚に、思わず身を竦める。背中にゾクリと甘い痺れが走った。
反射的に怜の胸を両手で押し返して離れようとするが、背中に回された大きな腕がそれを許してくれない。
心臓がバクバクと音を立ててどんどん加速していく。上昇する体温は美寧の体を熱くした。
訳が分からなくなってきて、瞳がじわりと熱く水気を帯びてくる。
「やっ、」
「このまま聞いてください、ミネ。」
低く絞り出すような掠れた声に、美寧は口を閉ざす。
「―――ゆうべはすみませんでした。」
その言葉に、美寧は体が硬くなる。
(やっぱりれいちゃんにとって、あれは間違ったことだったんだ……)
謝るということはそういうことだと思う。
「怒っていますか?」
申し訳なさそうにそう言われて、美寧は黙って頭を左右に振る。
「良かった。」
安堵する声が聞こえた後、美寧の額に柔らかのもが押し当てられた。
優しい口づけに泣きそうになる。
怜にとってこの口づけはきっと、駄々をこねる子どもをあやすようなものだろう。
彼の優しさすらこんなふうに考えてしまう自分は、やっぱり我がままなただのお子様なのだ。そう思ったら更に悲しくなって、美寧は唇を噛みしめた。
「どうしてそんな悲しそうな顔をするのですか?」
優しい声が頭から降ってくる。
何て答えたらいいのか分からずに、美寧は俯いたままただ小さく首を横に振った。
「俺はあなたを悲しませてる?」
その言葉にハッとなって顔を上げると、怜の瞳とぶつかった。
濡れたように光るその瞳が、何かを求めるように自分を見下ろしている。
いつも落ち着いていてあまり大きく変化することのない彼の、その切れ長な瞳の奥が何かに揺れている。
ゆっくりと怜の顔が近付いてくる。
美寧はその瞳に吸い込まれるように、ただ怜を見上げていた。