耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
そっと重ね合わせた唇は、すぐに離された。
「好きだよ。」
息が止まった。
「美寧が好きだ。」
「っ、」
「恋人じゃない人にキスするかどうかは、人それぞれかもしれないけれど、俺は好な女性(ひと)にしか、キスしない。」
はっきりと言いきった言葉の強さに、美寧はぐっと息を詰める。
「ミネは?」
問われたけれど、何のことか分からない。
「俺のことは嫌い?」
目を見開く。けれど少しも間を置かずに勢いよく頭を左右に振る。
その様子に目元を緩ませた怜が、立て続けに問うてくる。
「じゃあ好き?」
そう訊ねる声が溶けそうなほど甘くて、美寧のきゅうっと痛いくらいに締め付けられる。
(れいちゃんのことは、すき。でも、私の“すき”はれいちゃんと同じものなの……?)
良く回らない頭で、美寧は一生懸命考える。なんとなく勢いで答えるのは違う気がした。
難しい顔で考える美寧を、微笑を浮かべた怜はじっと見下ろしている。
「私……れいちゃんのこと」
美寧の言葉をさらうように、怜はもう一度美寧の唇に軽く口づけた。
「今は難しく考えないで。俺のことが嫌じゃなければ、俺の恋人になってくれませんか?ミネ。」
大きく丸く目を見開いた美寧は、みるみる顔を赤くしていく。
怜はクスリと小さく笑みこぼすと、
「ミネの嫌がることや怖がることは絶対にしないと誓います。だからミネ。ゆっくりでいいから、俺を好きになって。」
甘く乞う。細められた瞳が怖いくらい蠱惑的で。
少しの隙もないほどに美寧を見つめてくる。
こんな怜は今まで見たことがない。
くらりとした酩酊感を感じて、美寧はギュッと瞳を閉じた。
「―――美寧」
聞こえた自分の名前が、何か甘い別のもののような気がして、もう何も考えられなくなった美寧は、一度大きく頭を縦に振った。
「ありがとう。」
耳から流れ込んできたお礼の言葉を聞いたのを最後に、美寧はそのまま怜の胸に倒れ込むように身を預けた。
「大事にする―――ma minette」
怜のその言葉を遠くに聞きながら、美寧は眠りの中へ落ちていった。