耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
目覚める前から美寧が気になっていた匂いの正体は、畳。真新しいイ草の香りは、見知らぬ場所だというのに、美寧の心を落ち着かせる。
どうやら自分は和室に敷かれた布団の上に寝かされているようだ。
部屋を仕切るのは襖と障子。障子の薄い紙越しに外の明かりがさしこんでいて、電気を付けなくても十分明るかった。
「いま…何時……?」
外が明るいことに気が付いた美寧は、ふと疑問に思ったことを口にする。
「もう少しで十時になるところです。」
「もう少しで十時……っ!!わっ、私、行かなきゃっ!!」
勢いよく布団から体を起こすと、視界がぐらりと揺れる。思いがけない頭痛と体の痛みに耐えようと、美寧は青白い顔を歪ませた。
「大丈夫ですか?」
傾きかけた美寧の体を、逞しい腕が支える。
「まだ熱が高い。起き上がることすらきついはずです。そんな体でどこに行こうというのですか。」
口調は柔らかいが、そこにははっきりと美寧を窘める響きがある。
「私、行かなきゃ。……そうじゃないと…に迷惑が……わたしが……しなければ……」
自分の声すら頭に響いて、しゃべるのが辛い。
「しなければならないことが、あるんですか?」
その問いに美寧は黙って頷く。
「どんな理由があろうと、今の貴女にとって一番しなければならないことは、体を休めることですよ。」
そう言うと、彼はそっと美寧の体を布団に横たえた。