旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
『これで契約成立だ』
今日はまだ月曜日。
二十時半を過ぎると、残業しているのは自分ひとりだけになる。

束ねていた背中まである髪を解き、グンと腕を伸ばして肩や首を回してストレッチする。そして何気なしにスマホを見ると、新着メッセージ一件ありの文字が映し出されていた。

「あ、もしかして……!」

ドキドキしながらタップして確認すると、送り主はやはり例の彼だった。

「なんだろう、デートのお誘いとか? いや、もしや交際の申し込み?」

誰もいないオフィスで浮かれながらメッセージ文を目で追っていくと、次第に笑顔が消えていく。

「……嘘でしょ」

信じられなくてもう一度食い入るようにメッセージ文を読む。

【すみません、あなたのような方とは結婚を前提にお付き合いをすることができません。どうか見合う方との素敵な出会いがありますように】

それは結婚相談所で知り合った男性からの、お別れのメッセージだった。

私、姫野芽衣(ひめのめい)は二十六歳にして半年前から婚活を始めた。

過大な条件を相手に求めているわけではない。ただ、私は普通の結婚がしたいだけ。
容姿も年収も性格も普通の人なら誰だっていい。……一刻も早く結婚したいだけなのに。
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