旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
視線を泳がせていると、彼は私との距離を詰めた。びっくりして顔を上げると、目と鼻の先に門脇部長の端正な顔があって目を見開く。

あまりの近さにうまく呼吸ができなくなる中、彼はため息交じりに呟いた。

「これから死ぬまでずっと一緒に暮らすんだ。そんなに緊張していたら、自分の家なのに、いつまでもリラックスできないぞ?」

「それはそうですが……」

わかってはいるけど、やっぱり緊張してしまう。

再び視線を逸らした瞬間、唇に触れた温かな感触。視界いっぱいに門脇部長の顔が広がって瞬きさえできなくなる。

「――え……えっ!?」

唇が離れると同時に漏れた声。

い、今、門脇部長、キスしたよね!?

咄嗟に両手で口を覆うと、彼は屈んで私と目線を合わせた。

「俺と暮らす生活に早く慣れてよ」

「……っ! あんなことされたら、慣れるものも慣れません!!」

余計に意識しちゃうじゃない!

文句を言うと、なぜか門脇部長はまた笑う。

「うん、そうやって文句を言ってくれた方が断然いい。……俺と一緒にいて気が休まらないのは嫌だから」

「門脇部長……」

そうだよね、一緒に暮らす中で相手がずっと気を張っていたら、いい気分じゃないよね。私が門脇部長の立場でも同じことを思うもの。
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