旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「んー……それはもちろんわかっているけど、芽衣から美味しそうな匂いがするからさ」

私の首元に顔を埋めた彼に、心臓が飛び跳ねた。

「しゅっ、俊也さんっ!」

平静を装うことなどできなくなり、必死に彼の身体を押し返そうとしても、ビクともしない。
首元から彼の吐息を感じ、心臓が壊れそうになる。

「甘い匂いがする。……芽衣のこと、食べたくなる」

「なっ……! 私は食べ物ではありません!」

とんでもないことを言う俊也さんに抗議をすると、彼は声を押し殺して笑った。

「クククッ……。冗談に決まってるだろ? 本気にして。芽衣ってば本当に可愛いな」

「俊也さん!?」

ジロリと睨むと、やっと私の上から退いてくれた。

「離れないと、芽衣の心臓が止まりそうだからな」

うっ……! 必死に誤魔化していたのに、俊也さんにドキドキしていることはバレバレだったようだ。

だからあんなことをして私の反応を見てからかったんだ。

俊也さんって時々……いや、けっこう意地悪だよね。この一ヵ月で、何度同じようにからかわれたか。だけど……。

「芽衣」

先にベッドから降りた彼は、私に手を差し伸べた。
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