旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「芽衣ちゃんさ、今、ものすごくグルグルと悩んでいるでしょ?」

「えっ!?」

図星を突かれて大きな声が出てしまうと、門脇部長の笑いは増すばかり。

「アハハッ! やっぱり芽衣ちゃんは可愛いな」

「かわっ……!? 可愛いですか?」

言われ慣れていないワードに恥ずかしくなる。だけど彼は「あぁ、可愛い」と繰り返し言う。

「大恋愛の末に結婚している人たちばかりじゃないだろ? 出会ってすぐ結婚を決めちゃう人たちだっている。……俺たちはお互いのことを知らないわけではないし、結婚から関係を築くのも俺はアリだと思うんだけど、芽衣ちゃんは違う?」

そんなことを聞かれても困る。だって私自身、そういう始まり方があってもいいと思って婚活していたのだから。

だったらいいんじゃないかな。門脇部長と結婚しても。……それに私、門脇部長のことを嫌いじゃないもの。上司としてすごく尊敬しているから。

そんな彼となら、案外良い関係を築いていけるのかもしれない。

だけどひとつだけ気がかりなことがある。

「あの、ひとつお願いしていいですか?」

「もちろん。なに?」

それは結婚するにあたって、避けては通れない道。そして、婚活相手に振られてしまう理由でもある。
< 13 / 262 >

この作品をシェア

pagetop