旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「もちろん周囲に迷惑をかけないようにすることも大切だ。だが、なんでもひとりで抱え込むな。時には誰かを頼れ」

「俊也さん……」

そう言うと彼は私を抱き抱えた。

「キャッ!?」

軽々と私を抱いたまま彼は自分のデスクに向かい、荷物を持ってドアの方へ向かう。

「しゅ、俊也さん!?」

「熱があるんだ、歩かせるわけにはいかない」

「しかしっ……!」

密着する身体にドキドキして辛い。それにここは会社。いくら私の体調が優れないからといって、こんなところを誰かに見られたら恥ずかしい。

でも彼は下ろしてくれず、ドアを開けて廊下を突き進んでいく。誰もいないけど、いつどこで出会うかわからない。

周囲をキョロキョロしていると、俊也さんはどこか苛立った様子で口を開いた。

「さっきも言ったが、どうして俺を頼らなかったんだ? 会議が入っていたのは知っていたよな? 発注なら俺に任せればよかっただろ?」

「それはそうですが……」

でもこれは私の仕事だし。――と、心の中で唱えるとすかさず彼が言う。
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