旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「特注の件も、ひとりで抱え込まず連絡をくれたらよかったのに。ひとりより、ふたりで動いた方が早い」

もっともなことを言われ、口を噤む。

どうにか誰にも見られることなく彼の車が停めてある、地下駐車場に着いた。私を助手席に乗せると、俊也さんも運転席の乗り込み車を発進させた。

「あ、車のシートが……」

私が乗ったら濡れちゃうよね。どうして乗る前に気づかなかったかな。

熱のせいで意識が朦朧としながらも言うと、俊也さんは厳しい口調言った。

「そんなことを心配しなくていい。……なぁ、芽衣。俺たち結婚したんだ。どんな迷惑でもワガママでもいい、一番に頼ってくれ。……俺にだけは甘えてほしいんだ」

「俊也さん……」

お母さんが亡くなってから、ずっと気を張って生きてきた。昔はいつも甘えてきたのに、今はもう誰かにどうやって甘えたらいいのかさえ忘れてしまった。

できるだけ両親やお兄ちゃんに迷惑をかけないように、今日まで生きてきたから。だからこそ彼がくれた言葉が嬉しくて泣きそうになる。
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