旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「本当だぞ? 母さんは不器用な人だから、わかりにくいかもしれないが……。昔から誰よりも芽衣のことを心配していたのは母さんだ」

「……まさか」

思わず漏れた本音。だってそんな……。

出会った日から今日までの、お母さんの私に対する言動が脳裏に浮かぶ。

やっぱり信じられないよ。お母さんはずっと私に冷たかった。でもそれは仕方ないことだと思っていた。私はお母さんの本当の娘ではないのだから。

でもお兄ちゃんが手にしているのは、たしかに私の好きな紅茶。おもむろに受け取り中を見ると、一番好きなフレーバーだった。

「仕事が落ち着いたら、ゆっくり顔を見せに来い。……その時、母さんに直接聞いたらいい」

お兄ちゃんはそれ以上なにも言わず、優しく私の頭を撫でた。

本当なのかな、お母さんが私の心配をしてくれていたなんて。だけどお兄ちゃんが私に嘘をつくはずないよね? じゃあ本当なの?

すぐには信じることができず、紅茶が入った袋をギュッと握りしめた。
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