旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「えっと……じゃあ、お兄ちゃんと俊也さんはどうやって友達になったのか、教えてほしいな」

「いいぞ、いくらでも話してやる」

その後、お兄ちゃんと俊也さんの出会いから友達になるまでの話を聞きながら料理を完成させ、お兄ちゃんは「美味しい」と泣きながらすべて完食した。

食後はお母さんからもらった紅茶をふたりで飲み、二十二時半過ぎに名残惜しみながら、お兄ちゃんは帰っていった。

片づけをしながら、考えてしまうのは俊也さんのこと。

あの日から特に彼は変わらない。だったら別に気にすることないって頭では理解しているのに、どうしてもあの時の彼が頭から離れない。

だって涙するところを初めて見たから。……でも。

片づけを終えスマホを見ると、俊也さんからメッセージが届いていた。

【昴が来たんだって? 自慢げに芽衣の手料理を食べたと聞かされたよ。お疲れ様】

絵文字ひとつない、男の人らしいメッセージ文。だけど労いの言葉に頬が緩む。

彼の夢の中の出来事を気にしたって仕方ないよね。それに現実の俊也さんは、こんなに優しいもの。気にすることなく、私も早く俊也さんに気持ちを伝えるべきだよね。
< 157 / 262 >

この作品をシェア

pagetop