旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
不安になりながらオフィスを出て電話に出ると、陽気な声が届いた。

『お疲れ、芽衣。突然だけど今夜、空いてない?』

「お疲れ。本当に突然だね。悪いけど今夜は無理かな」

あと少ししたら帰れそうだけど、その分明日は仕事がたくさんあって早く帰れそうにない。

だから今夜のうちに明日の料理の買い出しや下準備をしておきたいから。

理由を説明すると、玲子は『フフフ』と笑った。

『それじゃ仕方ないわね。……好きって気づいたのに、なかなか告白しないから今夜、喝を入れてやろうと思ったの。結婚していることに安心して好きって言わずにいたら、門脇部長を誰かに奪われちゃうよって。彼って結婚してもモテるようだし』

「不吉なことを言わないでよ」

そうなんだよね、俊也さんは私と結婚した後も密かに人気がある。

それにタイミングよく一週間出張でいないし。ないと信じているけど、出張先で誰かに言い寄られたりしていないよね?

不安を煽られていると、玲子は『ごめん』と謝った。

『でも明日告白するって聞いて安心した。早く本当の意味で夫婦になれるといいね』

「……うん、ありがとう」

また今度、ゆっくり食事に行こうと約束をして通話を切った。
< 159 / 262 >

この作品をシェア

pagetop