旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「そんな相手とは離婚なさい。それじゃ芽衣さんが幸せになれないでしょ?」

いつになく声を張り、お父さんの制止を振り切り部屋に入ってきたのはお母さんだった。

「俊也君なら芽衣さんを幸せにしてくれると信じていたから、お嫁に出したというのに……!」

まるで自分のことのように怒るお母さんの姿に、涙はすっかり止まった。

え……今、目の前にいるのはお母さんだよね? だってこんなお母さん、私は知らない。

するとお母さんは、私と視線を合わせるように膝をついた。

「辛い思いをしてまで、続ける結婚生活なんて意味がないわ。あなたには、幸せな人生を送ってほしいの」

「お母さん……」

目を潤ませながら言われた言葉が信じられなくて、ただ茫然としてしまう。隣を見るとお兄ちゃんは、「これが母さんの本音だ」と言うように大きく頷いた。

だけどすぐには信じることができなくて、ずっと聞けずにいたことを口にした。

「お母さんは私のこと……嫌いなんじゃないんですか?」

だって私は愛人の子。お母さんとは血の繋がりはない。私なんて邪魔で煩わしい存在じゃなかったの?

するとお母さんは、声を震わせた。
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