旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「振られるのはこれで何回目だろう。……会うと必ずこうなる」

深いため息とともに椅子の背もたれに体重を預けた。

大学を卒業後、ドラッグストア・アオノに就職した私は、店舗勤務を経て一年前に本社の商品部に配属された。

そして今は、半年後に産休に入る織田杏(おだあん)先輩の後を引き継ぎ、スキンケア・メイクの関東エリアバイヤーになるべく勉強中。

覚えることはたくさんあって、責任ある仕事だし大変だと痛感している。でもだからこそやり甲斐があり、この先もずっと続けていきたいと思っていた。

結婚の条件には、結婚後も仕事を続けたいこと。プロフィール欄にもしっかり明記してもらっている。これに関しては寛大な男性が多いんだけれど……。

会って話をするようになって、自然の流れで聞かれるある質問に答えると、みんな手のひらを返す。結果、こうやって振られてしまうんだ。

「あ、メールしないと……」

担当のマッチングプランナーに振られたことを報告するべく、文字を打ち込んでいく。
送信し終えた後、再び深いため息が零れた。

「結婚したいな……」

本当に結婚したい。そうでないと私……。

「じゃあ、俺と結婚する?」
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