旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「うーん……さすがは仕事がデキる門脇部長ね。芽衣が今さら結婚したくないと言い出せないように、外堀を埋めにかかったわけだ。おまけに芽衣の話を聞かない徹底ぶりとは……」

「ちょっと感心しないでよ」

こっちは本気で悩んでいるというのに。

「アハハ、ごめんごめん。……まぁ、もうこうなったらもう、なるようになるしかないんじゃないの? 今さらどう説明するのよ。だって話す余地を与えてくれないんでしょ?」

「……うん」

玲子の言うように、もう明後日に差し迫っているんだもの。こうなったら流れに身を任せるしかないのかもしれない。

それに私の実家を見て知り、結婚はなかったことに……と言われたって、私はもう慣れっこだし。

すっかり食欲は失せ、深いため息が漏れた。

「芽衣も大変だね。……親は選べないし、仕方ないのかもしれないけどさ」

「……ね」

出るのは乾いた笑い声だけ。

私の父親は、誰もが知る全国的にも有名な食品会社の社長。その事実を知ると皆、私の元を去っていった。

きっと門脇部長も同じように離れていくと思う。『結婚しようと言ったことは、忘れてくれ』って言われそう。
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