旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「ごめんね、玲子。私……ズルイと言われようと、これ以上苦しい思いをしたくないんだ。自分でも驚くほど、俊也さんのことが大好きだから。だから弱くなっちゃう」

好きって気持ちを突き通す道もあると思う。そうすれば彼の気持ちが自分に向けられる日がくるかもしれない。

でも不透明で狭き道を進む勇気が私にはない。

「大好きな人だからこそ、本当は私と幸せになってくれたらいうことないんだけどね。きっと私じゃ俊也さんのことを、幸せにすることはできないから。だったら早く離れた方がいいと思うの」

「芽衣……」

俊也さんのことを思い出すと、まだ泣きそうになる。私の中からこれっぽっちも彼に対する気持ちが消えてくれない。

パクパクと料理を口に運ぶと、玲子は笑顔で言った。

「よし、芽衣! こうなったら私とふたりで婚活しよう!!」

「どうしたの? 藪から棒に……」

笑いながら言うと、玲子は前屈みになる。

「私もそろそろ本気で結婚したいなって思っていたの。……芽衣もさ、新しい恋をすればいいんだよ」

「玲子……」

彼女はスマホでなにやら検索し始めた。
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