旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「俊也が姫乃ちゃんをどれほど愛していたか、痛いくらい覚えている。……そんな人を忘れることなんて不可能でしょ? あなたの中から消えることは、一生ないと思うわ」

そう前置きすると、母さんは真っ直ぐに俺を見つめた。

「でもそれは私とお父さんも同じ。幼い頃から知っていた子ですもの、姫乃ちゃんの存在が消えることはないわ。それは当たり前のことなのよ? 故人を忘れることなんて誰もできないの」

「母さん……」

すると母さんは困ったように眉尻を下げた。

「今のあなた、姫乃ちゃんが亡くなった頃と同じ。辛そうで苦しそう。……俊也が気づいていないだけで、芽衣さんはあなたにとってかけがえのない、大切な存在になっているんじゃないの?」

「……まさか」

思わず漏れた声。だけど母さんはいつになく厳しく追及してくる。

「本当に? よく自分の気持ちを考えてみなさい。少なくともお母さんは、芽衣さんを私たちに紹介する俊也を見て、心から安心できたわ。……やっと姫乃ちゃん以上に愛した女性と巡り合えたと」
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