旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
こんな状態で誰かを好きになれるはずないじゃないか。……ましてや姫乃以上に愛することなどできないはずだ。

考えても出ない答えに悩みながら日々は流れていった。

会社で芽衣と顔を合わせても、彼女の願い通りこれまでと変わりなく気丈に接した。

芽衣もまた以前と変わらず接してくる。それが俺を苦しませた。

二週間が過ぎた頃、芽衣の存在を早く消したくて、出張中に荷物を取りにきたらどうだろうかと提案した。

きっと芽衣も俺がいる中、荷物を運び出すのは気まずいと思っているだろうから。

だけど自分で提案したくせに、いざ出張から戻り、家の中から芽衣の痕跡がなくなると寂しさに襲われた。

芽衣が使っていた部屋は綺麗に片づいていて、歯ブラシや化粧品など、日用品もすべてなくなっていた。

コンシェルジュから預かったカードキーを握りしめ、誰もいない部屋を見て回る。

離婚を受け入れたのは自分なのに、なぜこんなにも心が痛むのだろうか。

俺にとって芽衣は、どんな存在なんだ? 惹かれていたのはたしかだ。だから彼女と結婚したいと思ったのだから。

でも姫乃以上に好きにはなれなかった。……はずだよな?

自分の気持ちなのに、ますますわからなくなるばかりだった。
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