旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
学生だった俺にはこの指輪を買うのが精いっぱいだったけれど、姫乃は喜んでくれたよな。

そのまま海を眺めれば、波が寄せては返しを繰り返している。それは永遠に変わることのない光景。

「ありがとう、姫乃」

お前のおかげで自分の気持ちに気づくことができたよ。俺は姫乃を理由に、自分の気持ちから逃げていたんだ。

手紙に書かれていたように、姫乃ならきっと俺の中で生き続けるより、隣で生き続けたいと言うよな。

何度も姫乃の手紙を読み返し、昔の記憶が蘇った。姫乃と出会い、最初から他の子とは違う感情を抱いていたと思う。

付き合うようになってから姫乃に、『いつから私のことを好きだったの?』と聞かれたことがある。

あの時は照れくさかったのもあり、『いつでもいいだろ?』なんてはぐらかしたが……。

「気づいたら、キミが心の中にいたんだ」

好きになった瞬間など、覚えていない。むしろ今、好きになったと気づけるものなのか? と疑問に思う。

恋愛感情は知らないうちに育つものだと思うから。
< 231 / 262 >

この作品をシェア

pagetop