旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
また婚活を始めたらどうしようかと思い悩む中、どんなかたちでもいい、少しでも芽衣に今の俺の気持ちを伝えたくて、会社では芽衣のことを『姫野』と呼ぶようになった。

今の俺の心の中にいるのは姫乃じゃないと、メッセージを送るように。

しかし一ヵ月が過ぎても、ご両親に会うことも叶っていない。八方塞がりで切羽詰った状況の中、取引先から直帰途中に昴から電話がかかってきた。

足を止めて歩道の端に寄り、スマホを見つめてしまう。

昴には芽衣を迎えに来てほしいと連絡を取って以来、こちらから連絡をすることができずにいた。

芽衣のことが好きだと気づいてからも、昴とは話していない。なんとなくご両親を通さず、昴に伝えるのはズルイ気がしたから。

きっとあいつなら、『俺が一肌脱いでやるよ』と言ってくれそうだし。

だから電話には出ない方がいいのかもしれない。

そのままポケットにしまって再び歩を進めたものの、なかなか鳴り止まない着信音。かれこれ一分以上鳴り続けている。
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