旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「悪いけど今さら契約解除は許さない。このまま芽衣ちゃんには、俺と結婚してもらうよ」

「なっ……! 困ります、私は結婚できません!」

あまりに一方的な話に声を荒らげてしまう。

だけど彼はそれ以上なにも言うことなく、再び車を発進させた。

「とにかく一度、落ち着ついた場所で話をしよう。それに芽衣ちゃんが実家に挨拶に来てほしいと言うから今日伺ったんだ。もう後戻りできないんじゃないか?」

「それはっ……!」

脳裏に浮かぶのは、家族の姿。みんな私と門脇部長の結婚に好意的だった。それなのに今さら結婚しないとは、なかなか言いづらい。

ちょうど信号は赤に変わった。すると彼は私の心情を察したのか、にっこり微笑んだ。

「とりあえず、なにか食べにいこうか。話はその時にでも」

「……わかりました」

とにかく今は、もっと彼と話をするべきなのかもしれない。そう思い返事をすると、門脇部長は車を走らせた。
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