旦那様の独占欲に火をつけてしまいました～私、契約妻だったはずですが！～

「私、愛人の子なんです。母は父の会社で秘書として働いていたそうです。そこで父を好きになり、一度だけ関係を持った時に私を授かったらしくて。母は父から逃げるように会社を辞めて、誰にも告げずに私を出産しました」

「そう、だったのか……」

言葉を失う門脇部長。でも当然だよね、こんな話を聞かされたって普通は困るでしょ？　でも聞いてきたあなたが悪い。

「母は女手ひとつで、懸命に働きながら私を育ててくれました。寂しい時もありましたが、貧しいながらもふたりでの生活は幸せでした。……でも無理が祟ったんでしょうね。体調を崩して、入退院を繰り返すようになり、私が中学生になったばかりの頃、亡くなりました」

お母さんはずっと、私が中学に上がってセーラー服を着るのを楽しみにしていた。入学式には頑張って嬉しそうに来てくれたよね。

校門前で撮った写真が、ふたりで撮った最後の写真になってしまった。