旦那様の独占欲に火をつけてしまいました～私、契約妻だったはずですが！～

でも今思えば、当たり前の話だったと思う。施設には、両親がいなかったり、いても事情があり、一緒に暮らせない子ばかりだったから。

みんなから見たら、私は幸せ者だったのかもしれない。お父さんは会社の社長で経済的にも余裕があり、優しい人だったから。

「芽衣ちゃんは昴たちと、一緒に暮らしたくなかったのか？」

ずっと口を挟むことなく聞いてくれていた門脇部長の質問に、口が止まる。迷いながらも素直に答えた。

「……はい。だけどお父さんは根気強く施設に通い、私に会いに来てくれました。その度に聞かされていたんです。突然いなくなった母が心配で、ずっと行方を捜していたと。正直に話してくれました。母とは一夜限りの関係で、優秀な部下という感情以上の気持ちを持ち合わせてはいなかったと。……それは今も変わらないと」

最初はお母さんを失ったばかりの私に、なに言っているんだろうって思った。だって私にとってお母さんは、たったひとりの家族だったから。

しかし包み隠さずに話してくれたことで、お父さんを信用するようになったのかもしれない。