旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
いやいやいや、まさかそんな。ただの悪ふざけでしょ? 独身貴族の門脇部長が私なんかにプロポーズなんて、するわけないじゃない。

さっき私が振られたところを見て、からかっているだけでしょ?

だけどなぜか門脇部長が私を見る目は、真剣そのもの。私の答えを待っているようだ。

「えっと……冗談ですよね?」

顔を引きつらせながら問うと、彼は真面目な顔で言う。

「冗談でプロポーズをするわけないだろ?」

すぐに返ってきた答えに目を見開いた。

冗談じゃないってことは、本気!? ううん、そんなわけない。
意外と陽気な人だ。私が狼狽えるところを見て、笑うつもりなんでしょ?

「そんな真剣な顔したって私は騙されませんからね!?」

立ち上がってキッと鋭い眼差しを向けると、彼は目をパチクリさせた。

「な、なんですかその顔は……! 門脇部長、私がアタフタするところを見て笑うつもりだったんですよね?」

様子を窺いながら聞くと、彼は小さく息を吐く。
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