旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「俺は昴から聞く芽衣ちゃんしか知らなかったから、正直驚きを隠せない」

素直な感想を聞かせてくれた門脇部長に、「そうですよね、びっくりさせちゃいましたよね」と伝えた。

「お兄ちゃんは、とてもよくしてくれました。家を出てからも、なにかと気に掛けてくれて、よく食事に誘ってくれていましたから。……それは父も同じです」

だけど、お母さんだけは違った。家を出てから一度も連絡をくれることはなかった。お正月やなにかあった時に実家に帰った際、顔を合わせて挨拶を交わすだけ。

「お父さんもお兄ちゃんも必要以上に過保護で……。それは嬉しく思う反面、お母さんは面白く思っていないんじゃないかと」

お母さんの気持ちを考えると、複雑な思いが込み上がる。

愛する人が別の女性と関係を持ち、子供まで産んでいたんだもの。普通は私のことを引き取ることさえ、できないはず。もっと非難されても仕方ないくらいだ。

「もしかして芽衣ちゃんが、普通の結婚にこだわる理由はキミのお母さんにあるのか……?」

疑問に思いながら尋ねられた質問に、ゆっくりと頷いた。
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