旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「お父さんもお兄ちゃんも、いつまでも結婚しない私を心配して、良い縁談があるんだと勧めてくるようになりました。でもみんな久我の家に負けず劣らずの名家ばかりで。しかも、久我の家と縁が深い家の息子ばかりでした」

「……そうか」

「もし、ふたりの勧める相手と結婚したら、結婚後も私は久我の家となにかと付き合いが続いていきますよね? それをきっとお母さんは望んでいないと思うんです。だから私は、普通の人と普通の結婚がしたいんです。……それにこの世界にいると、いつまでも久我の家の愛人の子っていうレッテルを貼られたままな気がして」

一呼吸置き、門脇部長に自分の意思をハッキリと伝えた。

「だから私は、久我の家と縁もゆかりもない相手との結婚を望んでいます。……うちの会社の次期社長である門脇部長とは、結婚できません。私はもう、自分の生い立ちに負い目を感じて生きていきたくないんです」

結婚を急いではいたけれど、きっかけはどうであれ、共に生活をしていれば愛が芽生えると思う。

平凡で何気ない毎日を幸せに感じられるような、そんな結婚生活を誰かと送れるはず。そう信じて婚活してきた。
< 63 / 262 >

この作品をシェア

pagetop