旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
でも門脇部長とでは、そんな日々はきっとこない。彼と結婚したら、私はまた周囲からなんて言われるか……!

想像しただけで怖くて不安になり、俯き、膝の上で手をギュッと握りしめた。

「わかったよ」

「えっ?」

顔を上げて隣を見ると、門脇部長は私を見て少しだけ頬を緩めた。

「芽衣ちゃんが俺と結婚したくない理由が。……だから今度は、芽衣ちゃんが俺の話を聞いてくれる? キミだって知りたいだろ? 俺のことを」

「……はい、知りたいです」

どうして母方の性を名乗って仕事をしているのか。……そしてなぜ、こうも私との結婚にこだわるのかを。

その理由はなんとなくわかってはいるけれど、門脇部長の口からちゃんと聞きたい。
聞く体勢に入った私に、彼は自分のことを話してくれた。

「青野の家に生まれて、子供ながらに俺は大人になったら父さんの会社を継ぐんだと理解していた。……別に嫌とか、違う未来がいいとか思ったことはなかったんだ。父さんのことは子供の頃から尊敬していたから」

初めて聞く門脇部長の話に、口を挟むことなく耳を傾ける。
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