旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
普通の結婚をして、ありふれた毎日に幸せを感じられたら……と願っていたけれど、それは本当の幸せではないよね。

門脇部長の言う通り、何事にも逃げずに立ち向かった先に幸せがあるんじゃないかな? そう思えてならない。

「芽衣ちゃんのすべてを知った今だからこそ、心から幸せにしたいと思っているよ。そう思うのはキミのことが好きだからだ。……だからこそ俺も、正直に言うよ」

すると彼は掴んでいた私の手を離し、どこか悲しげに瞳を揺らした。

「これから先、同じ時間を過ごせば過ごすほど、芽衣ちゃんのことを好きになる自信がある。……だけどごめん、キミのことを好きになることはできても、愛することは一生できない」

「……えっ?」

どういうこと? 好きになることはできても、愛することはできないって。

どちらも同じ気持ちじゃないの? 誰かに惹かれることを意味しているよね? なにが違うというのだろうか。

混乱する私に彼は続けた。

「芽衣ちゃんだけじゃない、俺は絶対にこの先誰のことも愛せないんだ。だけど、芽衣ちゃんとは周りと同じように幸せな家庭を築いていきたいと思う。今日、キミの話を聞いてますますそう思った。……どうだろうか、俺と結婚してから夫婦としての関係を始めてみないか?」
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