旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
私もただ早く結婚がしたくて、条件に合う人なら誰だっていいと思っていた。きっかけはどうであれ、結婚して一緒に暮らす中で好きになれるかもしれないと安易に考えていたところもある。

それなのに私が門脇部長の結婚観について、偉そうにアレコレ言える立場じゃないよね。

返す言葉が見つからず目を伏せる私に、彼は続ける。

「それに『私なんか』なんて言うな。……俺は芽衣ちゃんだからこそ、結婚したいと思ったんだから」

「えっ?」

顔を上げると、目が合った門脇部長は微笑んだ。

「この一年間、上司として芽衣ちゃんのことを見てきた。……覚えることがたくさんで辛いはずなのに弱音を吐かずに、常に笑顔で頑張っているだろ? 周囲を気遣うことができて、努力家。そういう芽衣ちゃんだからこそ、結婚して関係を築けていけたら……と思ったんだ」

「門脇部長……」

びっくりだ。まさか門脇部長にそんな風に言ってもらえるなんて。

誰かに褒めてほしくて仕事をしているわけじゃないけれど、努力していることを誰かに気づいてもらえていたんだと思うと素直に嬉しい。

気を緩めたら泣いてしまいそうで、ギュッと唇を噛みしめた。
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