旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「とにかく芽衣を悲しませるようなことだけは、絶対するな」

門脇部長に釘を差すと、お兄ちゃんは私を見つめた。

「芽衣、結婚しても芽衣のうちなんだ。……なにかあってもなくても、好きな時に帰ってきていいんだからな? それといつだって俺を頼ってくれ。俺たち、たったふたりの兄妹なんだから」

「お兄ちゃん……」

お兄ちゃんの気持ちが嬉しくて、目頭が熱くなる。

久我の家に来た当初から、お兄ちゃんはずっと私に優しかった。ちょっぴり過保護なところもあったけれど、誰よりも大切にしてくれたよね。

辛いことがあっても、お兄ちゃんの存在に何度も助けられてきた。だからこそ今、しっかりと伝えたい。

「ありがとう、お兄ちゃん。……私じゃまったく力になれないかもしれないけど、お兄ちゃんもなにかあったら、なんでも私に言ってね。それとお兄ちゃんにも早く幸せになってほしい」

「芽衣……」

お兄ちゃんってば、私が嫁ぐまで自分は結婚しない!って言い切っちゃっていたけど、これできっと安心できたでしょ?

素直な想いを伝えると、またお兄ちゃんは目を潤ませて、勢いよく私に抱きついた。
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