旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「ったく、あいつは昔から変わらないな」

お兄ちゃんの姿が見えなくなると、門脇部長は呆れたように呟いた。

だけどさっきのふたりのやり取りと、彼の口ぶりから、やはり親密さが窺える。

文句を言いつつも、お互いのことを信頼しているんだよね。ふたりのやり取りは、見ているこっちは微笑ましい。

先ほどのふたりのやり取りを思い出すと、自然と頬が緩む。

「さて、と。芽衣ちゃん、俺たちも帰ろうか」

「……はい」

そうだ、私は青野芽衣になったんだ。今日から夫婦としての生活がスタートする。

「行こう」

そう言うと彼は、私の手を引き歩き出した。

昨日のうちに引っ越し業者に荷物を運んでもらい、今日から私は門脇部長が住むマンションで暮らすことになっている。

結婚したんだから、一緒に暮らすのは当たり前だけど……やっぱり緊張する。

彼が運転する車で向かった先は、土地開発が進むマンション街。その中の高層マンションの地下駐車場へ入っていく。

「ここは地下通路でスーパーや、ショッピングモールに繋がっているんだ。マンション内にもフィットネスやライブラリー、カフェなどがある。住民は自由に使うことができるから、今度一緒に行こう」

「は、はい」
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