視線が痛い――という表現があるけど、今はまさにそれだ。
 体育館に入って着席まで、すれ違う人が皆、こちらを見てきた。気のせいなんかじゃない。目が合いすぎる。中には「はあ?」などと驚嘆の声を上げてくる人もいた。

 そんなに僕は女の子みたいなのだろうか。そこまで女の子っぽくないと、自分は思うんだけれど。

 後ろの席から、やれ堀北だイケパラだなどと聞こえる。随分前に放送されたドラマの内容が、男子校に女の子が男装して紛れ込む――というやつだったから、皆それを言っているんだろう。堀北というのはその男装女子を演じた女優の事だ。やりずらいなぁ。大丈夫かな……僕。

「くっくっく……」

 笑いを堪える声が隣から聞こえる。自分を馬鹿にされた気がして、思いっきり相手を睨むと、彼はこちらに気付き、慌てて「ごめん」と言った。

「周りの反応が大げさだし、お前がかなり重たいため息ついてたからさ」

 メガネ越しの目から涙が滲んでる。そこまで笑うなんて、結構酷いよ。

 そんな僕の心境が彼に伝わったのか――まぁ、僕の顔に書いていたんだろう、彼はまた「悪かったって」と苦笑いを浮かべながら告げた。

「気にすんなって。最初だけだよ」

 慰めのつもりなんだろうか。彼は僕の反応を楽しんでるように見えた。
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