入学式が終わり、各々教室へと向かうその途中も、好奇の視線に晒される。

 圭介が冗談交じりで俺の彼女だ、なんて言っていた。さっきのメガネ君――名田和哉という名前らしい――も、悪乗りしてバカ、俺のだぞ、などと言う。正直、いい加減にして欲しかった。

 まあ、ここで本気で怒るのもどうかと思うんだけど、とりあえず本当に堪忍してと二人に頼んでおいた。二人はあまり悪びれた様子の無い謝罪をする。
 女の子扱いはしばらくなくなりそうに無いな……。

「お前声も高いよな」
「そうかな」

 圭介の言葉に疑問を抱く。一応声変わりはしているし、小学生のような中性的な声ではないはず。先述のナンパお兄さんも、僕の声にはあれ? という顔をしていたし……。

「まあ、そのツラでドスのきいた声だと怖いけどな」

 試しに声を低くして応えてみる。

「こんなんで……どう?」
「低いっちゃあ、低いけどな」
「なんでそんなオペラ歌手みたいなんだよ。声域広い奴だな」

 苦笑いを浮かべる圭介に対して、名田はどこか興味深そうだった。

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