残酷なこの世界は私に愛を教えた
◇◇◇
しばらくすると、田んぼが広がるのどかな風景には少し浮いて見えるおしゃれなカフェが見えてきた。
“Happiness”という筆記体の看板にはピンクとレモンイエローが使われている。
「あそこあそこ。結構おしゃれだと思わない?」
指差しながら楽しそうに笑う。
――♪♪♪
ドアを開けるとオルゴールの音色が響く。
「いらっしゃいませ~、ってなんだー隼人か」
カウンターを拭いていた女性が、振り向きざまにそう言う。
ん? 今、はやとって呼んだような。知り合い、なのかな?
「よっ、久しぶり。ってか今の時間こんな空いててやってけんの?」
「ちょ、うるさいわね! あんた久しぶりに来てそんな減らず口しか叩けないの? だいたいうちは夕方混む……」
「はいはい、言い訳は聞きたくありませーん」
ちょっとちょっと、大丈夫なの? そんな口きいて。
心配になりながら二人を見守っていると先輩と言い争っている女性と目が合った。
「あれ? この子はどちら様……。あっもしかして!」
「おい、変な勘違いすんなよ」
「彼女!?」
「はあ? 違うって……」
「そうかそうか、ついに隼人にも彼女がねえ。良いねえ~、青春だねっ! 今のうちしか青春出来ないからねー、全力で今を楽しん……」
「まじで違うから! 酔っ払いみたいにこの子に絡むなよ」
先輩が女の人の体をぐいぐい押し返す。
「なっ、失礼な。誰が酔っ払いですって!?」
先輩にたてつく女性を置いて、私をテラス席に連れて行く先輩。