残酷なこの世界は私に愛を教えた
愛珠の中学時代
◇◇◇
誰か居ないのだろうか。誰か、愛珠のことを良く知っている人物は。
いや、俺以上に愛珠と親しい奴が居たら何か嫌だけど。
……ってあれ? これじゃ嫉妬してるみてえじゃねえか?
「……それでですね、って聞いてます? 須貝先輩」
急に名前を呼ばれてハッとする。
「おう。聞いてるよ」
「嘘ですね。今完全に魂抜けてましたもん」
ムッと俺を睨む石橋さん。
てか何? 俺って考え事してる時そんなに間抜けな顔してんの?
「悪かったよ。で、何?」
「あー、今面倒くさいって思いましたね!?」
「思ってねえよ。もー何だよー、早く言えよー」
「やだ、何か怖い。助けて、愛珠」
石橋さんはそう言って愛珠に抱きつく。
……前々から思ってたけどさ、石橋さんって愛珠に対してスキンシップ激しくない?
いや、俺にもしてくるし誰にでも激しいタイプなんだろうけどさ。
あーでも女子って何もねえのに手繋いでたりするしな。俺には分かんねえ感覚だよなあ。
だって俺で言ったら智久に抱きつくってことだろ? ……うわ、無理無理。考えらんねえ。
「……隼人! もー、またボーっとしてる。何か最近多いね? 魂抜けてること」
「何なんだよ魂抜けてるって。え、俺そんな腑抜けた顔してんの?」
「そういう訳じゃないけど。何か、疲れてる感じ?」
「マジで?」
自覚なしなんだけどなあ。