残酷なこの世界は私に愛を教えた
「あ、それどう?」
沈黙を破って愛珠の食べているフルーツサンドを指す。
「ん? ああ、すっごい美味しいよ。食べる?」
「お、いいの? じゃあこっちも食べるか?」
「やった」
まだ石橋さんは黙ったままだったが、崩れかけた場の空気が少しずつ元に戻っていった。
でもやはり、少し取り繕われた戸惑いが隠しきれずに残っていた。
そうしてまた談笑をして、愛珠が「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる」と席を立った時だった。
「あれ? え、ちょっと……愛珠じゃない?」
声のする方を辿ると、3人組の女の子が驚いた顔で立っていた。
「あ、麻友子も居るじゃん! うわー、久しぶり!」
愛珠と石橋さんの表情から怪訝さが消え、次第に驚きが浮かぶ。
「え、沙羅(さら)?」
「そう!」
「夏海(なつみ)?」
「そうだよー!」
「楓(かえで)?」
「うん!」
「うわあ、ほんと? 懐かしいー! 久しぶり!」
手を取り合って懐かしむ彼女ら。
「知り合い?」
そう聞くと。
「うん! 中学の時の友達!」
と、予想通りの答えが返って来た。