残酷なこの世界は私に愛を教えた



今この子達が話してくれたことと千島さんから聞いたことは真逆だと思う反面、その二つを一人の“愛珠”という人物に重ね合わせることは簡単で。



まるで、永遠に追いかけっこをしているみたいだ。
“愛珠”という存在を知れたような気がしても次々と新しい一面が出てくる。


力強く俺を導いてくれたかと思えば、俺に縋り付く手は僅かに震えていたりして。




「愛珠にはいっぱい話聞いてもらったけど、恥ずかしい話、私達あんまり愛珠のこと良く知らないみたい」



さっき愛珠が沙羅と呼んでいた子が言う。



「愛珠は自分のことを話さないんだよね。まあ、私達が話す隙を与えないほど自分の話ばっかりしてたんだけど」



「……確かに。愛珠と遊んだこと無いし……てか私小学校から一緒だけど誰かと遊んだって話何回かしか聞いてないな」



「ま、そんな感じ! あんまり役に立たなくてごめんね?」



ふと中を見ると、お手洗いから戻ってきていたらしい愛珠と目が合った。



「ううん、ありがとう。聞けて良かった」



そう言って俺は中に戻った。





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