残酷なこの世界は私に愛を教えた
――ガチャン
家の玄関の重い音が私を飲み込む。
素早く着替えて、朝作れなかった夕ご飯を作り始める。気付かれないように。
料理が終わったら、洗濯物を取り込んで、新しい洗濯物を洗濯機にかける。
その時、廊下の奥で部屋のドアが開く音がした。
慌てて自分の部屋に駆け込んだ。
「愛珠ー」
私を呼ぶ声にいかにもその時初めて部屋から出るという素振りをする。
「ほら、お皿出して」
母と母の父母、つまり祖父母が集う食卓に無機質なテレビの音が流れている。
そこに映る芸能人や、近所の人の話題になって悪口に溢れるその空間を私は出来るだけ早く逃げたしたかった。