残酷なこの世界は私に愛を教えた
麻友子の気持ち
◇◇◇
普通にしろ、普通に。何も気付かれないように。
「ちょっと先輩ー! 駄目ですよ、野菜もちゃんと食べてください!」
「えー? 食ったよ」
「嘘付かないでください! 私は先輩が唐揚げしか食べてないの見逃してませんからね」
「ちっ」
「うわー、怖ーい」
自分勝手なこの気持ちを悟られないように。
目の前で隼人と麻友子が仲良さそうに話している。
麻友子はついこの前まで私の横に座って居たのに、最近は隼人の横が定位置になっている。
二人の距離が段々近くなっているのが分かる。
「ほら、ブロッコリー食べてください」
麻友子が隼人の皿へブロッコリーを運ぶ。
仕方なく、という風に隼人がそれを食べるのを麻友子が横でじっと見ている。
ああ、男子が上目遣いにドキッとするのって、今みたいな時なんだろうな。
隼人も麻友子みたいな美少女に惹かれるのかな。
「……上手い」
「やった! だから言ったでしょう?」
麻友子は「これも食べてください」なんて言いながらどんどんと食べ物を隼人の皿に乗せていく。
二人の肩が触れあうほど近い距離で話している。
まただ。胸が苦しい。
やっぱり、私は隼人と“二人きりになりたい”という勝手なことを思っている。