残酷なこの世界は私に愛を教えた
「……私、先に戻るね」
自分が嫌になって立ち上がる。
「あれ、今日早いね愛珠。まだ居れば良いのに」
麻友子が言う。
彼女の言葉は偽りの感情から来たものでは無いことくらい分かる。
いっそのことそれが偽りであれば良かったのに。
余計自分を醜く感じてしまう。
「ううん。ちょっと担任に呼ばれてるの」
嘘だ。いや、100パーセント嘘では無いけれど、担任に呼ばれているのは放課後だ。
「……何かあったら言えよ」
不意打ちの隼人の優しい言葉に驚く。
「?……うん」
私はその場を後にした。
ところが、教室に着いて忘れ物に気付く。
「あっ、水筒置いてきちゃった」
「うわ。昼休みあと30分あるから大丈夫だよ、行ってきな」
隣の席の美里が言う。
「だよね……。うわー、もう一往復か……」
「ファイト!」
そして私はまた教室を出た。
次にそこで目にする光景がどんなものかも知らずに。