残酷なこの世界は私に愛を教えた




「何を言ってるんだよ」



心底呆れたように祖母が言う。




「そうに決まってんだろ。大体何? その格好。気持ち悪い」




――あんたに言われたくない。

あんたにだけは。




「私だって……」


したい訳じゃない。




「あ? 何だよ、はっきり言えよ!」




「……私だってしたい訳じゃない。させられてるだけ」



自分でも驚くほどの低い声。




「孝彦のせいにするわけ?」




「……事実なんだから仕方ないでしょ?」




「意味わかんねえ。人のせいにすんじゃねえよ!」




次第に大きくなる母親の声に、遂に祖父母が動いた。




「まあまあ、そんなに怒るなって」



「まずは落ち着いて……」



だけど、それが逆効果だった。




「うるさいっ!!」





ほとんど正気を失ったと言っても良い叫び声だった。




母親が廊下を走っていく。




その狂気的な空気を感じ取った全員が後を追う。




「――お前、何持って……!」




祖父の声に目線を上げると夕日の光を反射する物が浮かんでいた。

持つ角度が変わると四方八方に集めた光を分散させる。




「……死ね」






――死にたく、ない。





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