残酷なこの世界は私に愛を教えた
「……どうすんだよ、この後」
「分かんない」
この後のことなんて考えたくもなかった。
後先考えずに行動したのは初めてだ。これも隼人のせいだ。
いや、“せい”と言うのは違う。隼人が居なかったら、私はきっとあの家から逃げなかった。逃げられなかった。
逃げても逃げる場所なんて無かったし、未成年である以上ずっと逃げて居られるとは思わなかった。
母親があらゆる手を使って私を連れ戻した後を考えると、そのままで居ることが唯一の残された道だと思っていた。
連れ戻された後の方が怖かった。どうなるかは想像出来なかったが、現在よりも悪い状況になることくらい分かっていたのだ。
「帰るのか? 家に」
「帰りたくない」
「じゃあ、行くとこあんのか?」
「……無いよ、そんなの」
飛び出して来たことを後悔したくなかった。
でも、これからのことを考えると何も見えなくてどうしたらいいのか分からない。
「俺んちに行こ?」
そうやってまた、隼人は私の手を引いてくれる。
「……うん」
私は着いていくしか無かった。