残酷なこの世界は私に愛を教えた
「麻友子……」
こんなひとつの空間で、逃げられなんてしないのに出来るだけ壁に逃げてしまう。
「え、愛珠……?」
私の派手な化粧に、目を見開く麻友子。
そりゃこんな格好初めて見たんだから驚くに決まってる。
それでも少しすると全く別のトーンで話始めた。
「愛珠、あのさ」
麻友子は何故か涙目だった。
いや……もう既に泣いていたのだろうか、目が赤く腫れていた。
「待って」
私には麻友子の話を遮る権利なんて無い。
私自身、隼人への気持ちに気付いたのはさっきだし、麻友子が隼人を好きになって告白して付き合うのは私がどうこう言うことじゃない。
麻友子に裏切られた訳じゃない。
それでもやっぱり、本人の口から聞いたらショックを受けることなんて分かりきっている。
「愛珠」
「ごめん、もう少し待って! もう少ししたらきっと麻友子達のこと喜べる……」
「好きなのっ!」
麻友子の聞いたことの無い大声に遮られる。
「えっ?」
隼人のことが?
「好きなの……」
麻友子は耐えきれなくなったように涙をこぼした。
「ま、麻友子……?」
「お願い、気持ち悪がらないで聞いて」
切に訴えるその声に圧倒されて私の口は言葉を発することが出来ない。
「私ね、私……好きなんだよ、愛珠のこと」