残酷なこの世界は私に愛を教えた
「えっ!?」
そういうのって、もっと大事になるんじゃないの?
水永先生と言えば、今の3年1組の担任だ。
もっと大事になって辞めたり、ニュースになったり……。
「あいつが男に襲われたなんて言いたくねえから、今後自分に近づかないでくれたら何も言わねえって言ってな」
「そんなの、危なくない……?」
「ああ。俺もそう思ったけどあいつがすげえ嫌がるから。仕方ねえから俺達がクラス下がることにしたんだ」
「えっ、俺達? てことは二人共去年は1組だったってこと?」
「そう」
基本的に1組の担任は3年間変わらない。
そして、クラスを下りる時も大抵は2組で、6組まで下がる人は中々居ない。
「じゃあ、6組まで落ちたのって校舎を変えるため……?」
丁度、6組で校舎が変わるのだ。
「そういうこと」
なるほど、それなら全て辻褄が合う。
隼人が頭が良いのも、良く1号舎に来ているのも。
「先生達は何も知らねえから反対されたよ。でも放課後に元々教科担当だった先生の課外授業を受けるってことでお互い妥協した感じかな」
「中田先輩があんな格好してるのも?」
「ああ、あれな。俺はあれは反対だけど、なめられたくねえっつってな」
効果あんのか、と隼人は笑う。
その時、壮ちゃんのお父さんの声が頭に響いた。
『じゃあな。すまないが、智久のこともよろしく頼むな』
夏休みのあの日、帰り際に隼人が言われていた。
壮ちゃんのお父さんは、中田先輩のお兄さんだったはずだ。
当たり前のやり取りの中に少しだけ違和感を覚えたのは事実だ。
あの言葉はその意味も含めていたのだろうか。