残酷なこの世界は私に愛を教えた
「隼人は何で一緒に下りたの? ……やっぱり、壮ちゃんのことで……?」
そのことで負い目があったのだろうか。
当時の隼人は壮ちゃんのことでかなり自分を責めていたはずだ。
「ああ、それもあるけど……普通に心配だったんだよ。いや、壮介のこともかなりデカかったかもな」
少し彼は笑う。
「でもやっぱり心配だったよ。あいつ綺麗な顔してんだろ? おまけに肉付かねえ体質で華奢だったしな」
なんか、不思議だ。いつも仲が良いのか悪いのか分からないようなことばかり言っているから。
「優しいね」
「親友だからな」
隼人は柔らかな笑みを浮かべた。
不覚にもその表情に胸が高鳴る。
ああ、好きだな。その顔。
そんなことをぼんやりと思う。
「で、本題。いい?」
そして隼人が突然真剣な顔になる。
「う……」
そう言えば、麻友子と話す前に隼人の話を聞かなかったんだった。
あれ? ……でも、麻友子との誤解は解けた訳だし、何の話だろ?
思い当たる節が多すぎて分からない。
こんな格好のこと?
母親のこと?
そんなことをぐるぐると考えて黙っていると、隼人が口を開くのが分かった。
「愛珠。……好きです。付き合って下さい」
「……へ?」