残酷なこの世界は私に愛を教えた
そして、隼人は腕を緩める。
「キス、していい?」
近くで見る彼の目は淡い茶色で、私のことを吸い寄せる。
私が返事をしないうちに隼人の唇が私の唇に重なった。
人の唇ってこんなに温かくて柔らかいんだな……なんて考える。
隼人がそっと唇を放して、彼の顔が見えるようになると体温が一気に上がるのが分かる。
「……もしかして、ファーストキス?」
「う、……いいでしょ、別に」
本当のことに思わず素っ気ない言葉が飛び出した。
すると、彼の綺麗な形をした唇の端が上がり、艶やかな笑顔を作る。
うわあ、色気半端ない……。そんな顔されたら心臓停止するんだけど? 殺す気ですか?
「嬉しい」
そう言ってまた隼人はキスをした。ただ、さっきと違うのは彼の舌が入ってきたことだった。
「待って、はや、と」
初めてって言ってんのにそんなに高度なこと出来ないって!
隼人の胸を叩くが、彼は全くお構いなしだ。
「……っ、はぁ、はぁ……」
数分後、彼から解放された私は息も絶え絶えだった。
隼人はそんな私を見て笑う。
意地が悪い。
「もう、いきなりこんな……」
「悪い。嬉しくてつい」
そんなことを言いながら私の唇の輪郭をなぞる。
なんか……隼人って色っぽいなあ!
そんな顔でそんなことされて落ちない女子なんて居ないでしょ。
彼は思わず顔を背ける私の頭を撫でる。
隼人の手は凄く優しくて、今日あった嫌なこと全部、どうでも良いとさえ思えた。