残酷なこの世界は私に愛を教えた



◇◇◇



いつの間にこんなに日が傾いていたんだろう。
先輩と話し込んでるうちに、時刻は6時を回っていた。



『門限、何時なの』



“特には決まってない”



『じゃあ、何時くらいに帰りたい、とか』



“6時、とか? 家まであんまり遠くないし”



そんなやり取りを、数時間前にしていた。



「あ、そろそろ帰る?」



そう言って、先輩はブレザーを羽織る。
何も言わないけど、じゃ行こうかという空気が流れる。



スマートに切り出してくれて何だかホッとする。


いや、普通のことだとは思う。けど、男子高校生でこんなにさらっと当たり前のことが出来る人ってあんまりいない気がした。


別れの時間がほんのちょっとだけ苦手だった。学校から帰るときとか、友達と遊んだ帰りとか。


切り出すのが気まずくて。


早く帰りたいのに会話が途切れなくて帰れなかったり、逆にまだ帰りたく無いのに切り出さなくちゃいけなかったり。



なぜかは分からないけど、そんなほんの些細な気まずさも彼との時間には存在しなかった。




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