残酷なこの世界は私に愛を教えた

静かな家




昼休みになり、私は急いで校門に向かう。


なんか悪いことをしているみたいで気が引ける……ていうか、悪いことなんだけど。



「お、来た来た」



隼人はというといつもと全く変わらないマイペースでこちらに手を振っている。



何と言うか……あなたには全く罪の意識は無いんですね?
まあ、知ってたけど。

もう逆に凄いよ。



「早く行こーぜ」



「うん」


私達は学校を脱け出した。








運良く家には誰も居なかった。


素早く入り込んで、出来るだけ必要な物のみを持ち出すようにする。



誰も居ない家には、鉛のような空気が腰を下ろしていた。

暗くて、湿気の多い空気。


そう感じるのは、先入観だろうか。



「もうこれで大丈夫か?」



「うん」



そして、靴を履こうとした時に思い出す。



「あっ、ちょっと待って」


「どうした?」



小走りで部屋に戻り、机の引き出しを開ける。


忘れ物を手にしてまた玄関へ戻る。



「ん? ああ、あの時のやつか」



そう、あの日テーマパークでお互いに買ったネックレス。


いつの間にか、私はこれを宝物にしていた。



そして今度こそ家を出る。



「じゃ、俺んちにこれ行置きに行こうか」


「うん」



両手に荷物を抱え、後ろを振り返る。



それは何だか新鮮な景色だった。







鬼のいない鬼ヶ島。







そんな言葉が似合う。

鬼達の活気さえも無い、ただ不吉な空気感だけを感じる。


でもそれはもう私を縛ることはない。


それだけで、この大きな負の島もちっぽけな牢屋に思えた。





< 153 / 197 >

この作品をシェア

pagetop