残酷なこの世界は私に愛を教えた
「はぁー、終わったー」
荷物を全部――といっても二人で持てる量だが――を運び終え、隼人が大きく息を吐く。
「手伝ってくれてありがとね」
「いーえ」
「ん? 戻んないの?」
どっかりと椅子に腰を下ろした隼人に声を掛ける。
すると彼は「眠い……」なんて言い出した。
「ちょっと昼寝してから行こうぜ」
「え? でも昼休みあと40分だよ?」
学校に戻ってお昼を食べることを考えるとギリギリなんだけど……。
いや、ギリギリどころかお昼食べられないかも。
これでもうちの学校の昼休みが長いから脱け出せたんだ。
「余裕じゃん……」
そんなことを言うときにはもう彼は寝ている訳で。
「もう、寝るの速すぎ……」
私は横に座って待つことにした。
何故だか、戻らなきゃという焦りは起きなかった。
これも、隼人の影響かな。
体が軽い。 全部重りが取れたみたい。
隼人と一緒に居ると気が楽になって、安心する。
重くて黒い塊がスッと消えて無くなっていく。身体中を縛り付けて私を抑え込む縄がほどけていく。
そこに塊や縄があったことさえ無かったことにしてしまう。
ただただ彼の隣は心地よくて、楽しくて、温かくて……。
これが包容力と言うものなのだろうか。
隼人の寝顔に光が当たって、彼自身が神々しく光を放っているように見える。
どうしようもなく愛しい。
自分の気持ちに気付いてから、一秒ごとにその想いが大きくなっていくみたいだ。
「好き……」
私は小さく呟いた。