残酷なこの世界は私に愛を教えた
相変わらず須貝家は楽しかった。
みんなキャラクターが濃くて独特な会話を織り成していく。
「あ、そうだ愛珠ちゃん。私達、明日から1週間泊まりで家開けるの。あ、仕事でよ? だから隼人をよろしくね」
お義母さんが私の肩に手を乗せ言う。
「なんでそうなる?」
「そうだぞ、母さん。隼人は芽里よりは頼りになるぞ」
「ちょっと、どさくさに紛れて私の悪口言ったわね?」
と、こんな調子で最後の最後まで楽しい会話を繰り広げて出掛けて行った。
「愛珠~。こっちおいで」
夕飯の後、テレビの前のソファーで隼人が呼ぶ。
「どうしたー?」
「テレビ見よーぜ」
隼人の隣に座ると隼人が私の肩を抱く。
そのまま頭を寄せる彼。
彼の柔らかな髪が少し耳に当たってくすぐったい。
「チューしたいけど夕飯の味しそうだからやめとこ」
「ふふっ。うん、やめといた方が良いね」
そう言って彼を見上げると。
「可愛いなあ、もう!」
そのままギュッと抱き締められる。
私もそっと隼人の体に手を回そうとしたその時だった。
「ちょっと、私の存在忘れないでくれる? 仲良いのはいいけど」
と、りーさんの声が間に割って入った。
隼人はというと「何だよ~。折角1日のストレスを癒そうとしたのに」と私を放さない。